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女性執行役員インタビュー

“一人ずつ”の個性を力に
サステナブルな文化を作りたい

恩田 ちさと

Chisato ONDA

執行役員
サステナビリティ経営推進部長

一橋大学卒。1995年に女性総合職4期目として入社。化学プラント部に配属された後、関係会社や基礎化学品燃料部への出向などを経験し、2000年よりベネズエラに2年駐在。その後プロジェクト本部の中南米担当に帰任、船舶・航空本部への社内出向等の経験を経て、2014年よりプロジェクト本部の中南米担当部署にて室長に。2020年よりサステナビリティ経営推進部長、2023年4月より現職。

社会の様々な要素が総合商社には詰まっている

「1つの会社の中に、社会全体の構造が入っている」
それが、私が総合商社に対して最初に感じた印象でした。
私は1つに特化するよりも、いろいろなことを自分で経験し、体得していきたいタイプ。今のようにネットも普及していませんから、実際の就職活動を通じて社員の方とお話しすることが情報収集でした。その中で「総合商社は社会の幅広い分野に関わることのできる企業」であると知り、気持ちが高まったのです。
女性の総合職採用4期目として入社し、同期は男性が100人以上いる中で女性は3人だけでしたが、不安はありませんでした。
学生時代はラグビー部のマネージャーをしていましたし、大学でも女性は少数派。女性が少ない環境には慣れていました。
当時は社会的に女性の総合職採用が始まったばかりだったので、女性でもしっかりと仕事ができそうな三井物産に決めました。面接でお会いする人たちが魅力的だったことも背中を押しました。

共通言語がなくても、全身全霊で信頼関係を築く

未経験のことや困難があっても最初から諦めることをせず、とりあえず挑戦してみたいというのは、幼いころからの私の傾向かもしれません。仕事でも同じ思いを持って取り組んでいます。
何か疑問があったら、飛び込んで、まず体験して、理解したい。相手を理解せずに押し付けたり、先入観で決めてしまったりしたくない……という思いが強い。
入社7年目でベネズエラに駐在する話が来た時にも、不安に思うどころかワクワクしました。当時は女性が中南米に駐在している前例がなく、当時の私はスペイン語も話せませんでしたから。
ベネズエラに行く前に担当していたメキシコのお客様との交渉は、これまで忘れられない仕事の1つです。スペイン語ができなかった私と、英語があまりできなかったお客様。互いの共通言語がない中で、重要な交渉をしなくてはいけませんでした。
基本的なやり取りは私と先方の1対1。ジェスチャーを使い、時には筆談を使い、そして心をこめ、まさに全身全霊で信頼関係を築こうと努力しました。

最終的には、2年間かかって契約を成立することができました。諦めずに試行錯誤し続ければ道は開ける──とその後の自信になった仕事でした。
ベネズエラ赴任後も、前任者の担当分野(セグメント)がまったく異なっていたので、お客様の引き継ぎができず、私はゼロからの出発でした。
客先の電話帳で調べては、アポイントを取り付けました。先方の会社に着くと、受付や秘書とのやり取りは、事前に秘書に紙へ書いてもらったスペイン語の定型文を読み上げて、なんとかつないでもらう始末。それを繰り返して、やっと英語のできる上の方々にお会いできるという感じでした。
言葉が通じなくても話そうと思えば通じる、というのはそうした経験から学びました。

時間には限りがあるから、切り替えて前を向く

海外のプロジェクトは、国の政治や制度に大きく左右され、思い通りにならないことが多々あります。
懸命に取り組んだプロジェクトが、国の制度やトップがかわることで一瞬にしてダメになってしまうこともある。もはや悩んでも仕方ないのですが、これまでの苦労や関わった人の顔が浮かび、「ここまでやったのに」という思いは拭えませんでした。
やるせない気持ちが続いていた時、上司の言葉にハッとしました。
「悩んでも仕方ないことに悩んだって時間の無駄だよ」
同じころ、ブラジル人のお客様から言われて、ストンと腹落ちした言葉がありました。
「Life is short. No time to be unhappy.(人生は短いから、不幸になっている時間はない)」
そう、くよくよしている時間はもったいない。
こうした宝物のような言葉をいただいてから、「頭を切り替えて他の方法を考えよう」と思えるようになりました。
2年間の駐在の間、挑戦の連続でしたが、大きな成長の機会になったと思えるのは、そうした言葉や経験のおかげです。

会社としてより人としての「一期一会」

ベネズエラ滞在中には大きな政変がありました。事務所の前で政権反対派の発砲事件が起きるほど。街中で戦車が走っていたり、クーデター未遂が起きたり、映画の中のような日々でした。
お世話になったパートナー企業のCFOが、安全のために急遽国外退去しなくてはならないと聞き、連絡するか迷いました。上司に相談した時に言われたのは、「どんな状況でも一期一会の出会いを大事に」という言葉。
すぐにそのCFOに連絡をすると「もう携帯電話の電源を切って避難するところだったが、君が日本企業で唯一連絡をくれました。どうか安全に再会できたら、また連絡を取りましょう」と言って、通話が切れました。
危機的な状況で、その後の数週間、音沙汰が途絶えてしまった。私はひたすら安全を願うばかりでした。
国の状況が少し落ち着き、その方が帰国されてから数週間後に連絡をくださり、心から安堵しました。総合商社というと、交渉して仕事をつくっていくイメージかもしれませんが、交渉といってもケンカのようなやり取りではありません。お互いがお互いを分かりあう中で、いろんな条件や落としどころを探していく、人と人とのつながりです。
たとえば、ビジネスパートナーであったノルウェーの企業からいただいた提案をお断りしなくてはいけない時もありました。ちょうど担当していたブラジルへ向かう途中でノルウェーに寄り、「こういった理由でできません。申し訳ありません」と顔を合わせてお話ししました。
すると先方は驚き、「断るためだけにわざわざ会いに来た人は、あなたが初めてです」と、感謝してくれました。
このように、ビジネスの機会につながらない時も、せっかく出会えたパートナーたちとの一期一会を大事にしていきたいと常に思って動いています。

リーダーとしての失敗。信頼とコミュニケーションを重視するように

一見、熱量を持って仕事をどんどん進めていく私ですが、実は初めてプロジェクトのリーダーポジションを任された時は、失敗の連続でした。
ずっと一人で案件を進めることが多かったので、メンバーたちと協働することに慣れていなかったのです。
仕事って、自分でやるのが一番早い。しかし、それでは大きなことは成し遂げられないし、限界がきます。
結局一人で悩みながらやっていて、案の定数カ月で限界が来ました。
「そうなると思っていたよ」。相談に駆け込んだ室長は、予想していたと言わんばかりに頷きました。だったら早く言ってくれればいいのに、と思いましたが(笑)。
当時の私の課題は、仕事を切り分け、ちゃんと人を信頼して任せるということができていなかったということ。もっとメンバーたちに任せたら良かったのです。そうしないと彼らも成長できる機会がない。
相談したことが1つのターニングポイントになり、そこからは、どんどんメンバーたちに任せるようになりました。

管理職として大事にしているのは、メンバーとのコミュニケーションです。
相手のことを知らないと、適している仕事もその人に合わせたキャリアサポートもできません。こちらが勝手に思い込んで「これがいいのでは」と決めてしまうことで、勘違いも生まれます。
現在率いるサステナビリティ経営推進部には30人以上のメンバーたちがいますが、基本的には全員と四半期に最低でも1回ずつは1on1で話をし、心配な時はさらに頻度を高めて月に1度ほど、個別に話す時間を持つようにしています。
毎回深刻な話をしているわけではありませんが、下のポジションの人から上の人に急に悩みを打ち明けるのはなかなかハードルが高いですよね。日頃から「あなたの話を聞いているよ」という姿勢と、定期的に話せる時間を確保することを大事にしています。

コミットメントとオーナーシップで、自立して働ける人に

メンバーには、細かく指示を出すよりも、どんどん自ら現場に行ってもらうことを大事にしています。
仕事は現場にある。
だから「新しい仕事のタネを見つけるために、どんどん事業本部の人や社外の人と話してください」「現場に行ってください」などと言っています。
現場に足を運んで、お客さんやパートナーになりそうな企業に聞いて回る。業務も働き方も自分のやりやすい方法を見つけていってもらえるように、自走していくことをサポートしています。
柔軟な働き方が進む一方で、働く場所や時間が異なってもその人を信頼して仕事を任せていくには、「コミットメントとオーナーシップ」が欠かせません。
それにより、各々が自分の業務に対して、そして組織に対して自律的に取り組む姿勢を持つからこそ、組織から個人に対する信頼を積み上げていけると考えています。
一方で、個人が一人で頑張りすぎてしまった結果、若いころに私が感じた「限界」のような失敗は経験してほしくないと考えています。

そのためにも、メンバーの声をしっかり聞きたい。もし心が弱くなっているならケアをしたいですし、時には嫌われてでも厳しいことを言わなくてはいけないこともあります。
もう一踏ん張りしないといけない時って、仕事にはありますよね。そんな時、ちゃんと踏ん張れるようにサポートするようにしています。
それぞれに子育て中や介護中など、抱えている事情がありますが、こうしたライフステージの実態を把握し、働き方のニーズや事情を考慮して、サポートできるように心がけています。
コロナ禍でテレワークが普及したことにより、さらに働く場所や時間にも柔軟に対応できるようになりました。
それを可能にするためにも、やっぱりコミュニケーションと信頼関係は基本で、それにより一人一人がビロンギングス(所属意識)を感じられるような組織づくりを心がけていきたいですね。

サステナビリティ経営は、一人一人に根付かせる新しい文化

現在は、サステナビリティ経営推進に携わっています。サステナビリティ経営とは、ある意味で会社の文化をつくっていくことだと思っています。
サステナビリティで一番大事なのは、現場の一人一人が自然のものとして取り入れることです。
上からの押し付けではダメなのです。もちろん会社として方針を伝えるのは大事ですが、サステナビリティの観点で良い事業があったら、社内のイントラなどで公開したり、その担当者や室長を招いてワークショップを開いたりと、情報発信と共有を積極的に行っています。
それぞれの現場から「これはどうなんだろう」と相談や変革の声を出してもらう機会も大事にしています。
そして、多様性も企業のサステナビリティに不可欠な要素です。ダイバーシティ&インクルージョンの視点から見ても、今は社内でも女性の人数は圧倒的に増えましたし、活躍の場が増え、制度も充実しています。

今は、仕事でも職種でも「女性だから」「男性だから」という風潮はまったくない。単なる個性の違いですよね。その人の得意や不得意があり、考え方の違いがある。それはもう性差とは関係ないのです。特に、若い世代ほどその潮流を感じます。
そして三井物産では、「多様性をつくろう」というフェーズはとっくに超えていると思います。これからは多様な人がいる中で、どのようにその力を会社として活用していき会社の強みとしていくのか?という、次のフェーズに移行していることを実感しています。ただ、いろいろな人や価値観がバラバラにあるだけでは意味がない。「利益のために何でもそれぞれやっていい」ということではないのです。
「インテグリティのある組織をつくる」というのは、三井物産が掲げている5つのマテリアリティの1つです。

当社が掲げる5つのマテリアリティを基本的な価値観として共有したうえで、「社会のためになることをやっていこう」という共通のゴールや目標、目的を達成するために、それぞれがコミットメントとオーナーシップを発揮して、発想や力を掛け合わせていく必要があります。

そうしたお互いが尊重できるインテグリティ意識のある人たちがつくり出す多様性こそが、会社としてのサステナビリティの幹になって、大きな木として育っていく──。
私たちは、社員一人一人が改めてサステナビリティを認識して、それぞれの枝を伸ばしていける土壌をつくっていきたいですね。