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モビリティの新しい未来を創りたい。メーカーで学んだ“型”と複眼的な目線を武器に挑む

モビリティの新しい未来を創りたい。メーカーで学んだ“型”と複眼的な目線を武器に挑む

キャリア採用で入社して活躍している社員と、取り組んだプロジェクト事例を深掘りしながら、前職で培った“Profession”(専門性)をどのように活かして三井物産で“知的化学反応”を創り出しているのかをひもとくシリーズ「Pick up the Project of Profession」。
第2回に登場するのは、モビリティ第一本部室長補佐の荒井由佳里さんです。自動車メーカーから転身し、三井物産でも自動車関連のビジネスに携わる荒井さんに、これまでのキャリアを活かしてバリューを発揮するための秘訣について聞きました。

モビリティ第一本部 Light Vehicleソリューション事業部第二事業室 室長補佐 荒井由佳里さん

2014年に大学を卒業し、大手総合商社に入社。同年、家族の事情で退社し大手自動車メーカーに入社。国際税務や投資業務などに従事し、2020年に三井物産入社。現在はLight Vehicleソリューション事業部で室長補佐として活躍している。

メーカーの外側から、モビリティの未来を創りたい

荒井さんは2社での勤務経験を経て、三井物産に入社しています。もともと、どのようなキャリアを思い描いていたのでしょうか?

新卒では、別の大手商社に就職しました。父が自動車メーカー、兄が鉄道会社ということもあって乗り物に興味を持っており、こうした領域に強いといったイメージをその商社が打ち出していたところに惹かれて入社を決めました。
連結する海外のグループ会社のシステム刷新を担うプロジェクトチームに配属され、社会人のイロハから学びました。ところが、入社して初めての夏に、実家の家族の体調が悪いことがわかりました。
上司との面談では、翌年から海外各国のグループ会社を転々とする、長期の出張をお願いしたいといわれていたので、とても悩みました。海外にいては、いざというときにすぐ帰ることはできません。休職や実家に近い拠点への異動といった可能性も模索しましたが、やはり個人的な問題でこれ以上迷惑をかけられないと思い、退職を決意しました。
家族となるべく一緒に過ごしたいと、地元である愛知県で勤務できる転職先を探し、自動車メーカーに入社することになりました。

自動車メーカーではどのような業務を担ったのでしょうか?

まず経理本部で国際税務のチームに配属されて海外との取引に関わる税務申告実務を担当し、その後はモビリティ関連企業への投資や株式の管理を担う部署に異動しました。“投資”といっても、何かの機能や技術を得る目的よりも、モビリティの進化を通じて地域や社会の課題を解決し、よりよい未来を実現していくための協業相手・仲間づくりといった要素が強く、そんな前職の姿勢にはとても共感していました。
その一方で、もどかしさを感じることも増えてきました。大手自動車メーカーだったので、その看板があることがプラスに働くことが多かったものの、逆にそれが障壁になることもあったからです。描く未来は同じなのに、当事者だけではリーチできない問題も多く、だったら外からそれをつないでいくことで解決できるのではないかと思うようになったのです。

それで転職を考えたということですね。三井物産のどこに魅力を感じたのでしょうか?

複数のビジネスをつなぐことで、より大きな成果を実現していく総合商社の役割は、今後より大きくなっていくように感じていました。家族との時間を過ごした後、もう一度東京、そして世界を舞台にチャレンジしてみたいと総合商社のキャリア採用に挑むことに決めました。
三井物産に魅力を感じたのは、多くある事業本部が競い合うのではなく、共に成長する仲間として協力し合う企業文化が根付いているところです。また、三井物産は自動車業界とのつながりが深く、まさに私がやりたい仕事ができると感じたことも決め手になりました。
前職の当時の上司に退社の意思を伝える際、こうした私の思いを正直に話したところ、「三井物産の荒井さんとして、また一緒に仕事をしましょう」と送り出していただくことができました。

自由な発想で仕事ができる“三井物産流”に共感

2020年に三井物産に入社し、どんな業務を担当してきましたか?

モビリティ第一本部次世代ソリューション事業部に配属となり、出資先であるチリ最大手のフリートマネジメント(法人や団体が持つ社用車や事業用車両の管理)を行う企業の事業管理と、その連結子会社化に向けた稟議を担うことになりました。
従来三井物産が南米で担ってきた自動車ビジネスの多くは卸と販売でしたが、これからは所有から利用へとニーズが変わっていくとの考えのもと、私が入社する3年前にチリのこの会社に対して49%の出資に踏み切っていました。その後の業績は好調で、出資比率を60%に増やす方針を決め、社内での承認を求めていくことになりました。
足元の業績は良いとはいえ、49%の非連結のままなら最終利益だけを三井物産本社に上乗せできるのに対し、持分60%の連結子会社となればすべての業績数値の60%を取り込むので、見かけの収益は悪化します。
この点を心配する反対意見があがることは事前に予想できたので、今後さらに出資比率を上げていくことで連結後の業績は改善すること、さらに今後の業績成長の蓋然性や営業戦略、ガバナンス改善、南米諸国の政府の姿勢などありとあらゆる課題をピックアップしてはつぶしていきました。こうした経営陣が納得できる材料を示していくプロセスは、気が遠くなるほど大変な作業でした。
それでも、それぞれが強みを持つチーム員にサポートしてもらい、何とか稟議にこぎつけることができました。チームには、稟議の実務に強い室長、現地に寄り添いつつ本店側の意見もしっかり対応するチームリーダー、現地への出張を重ねて理解が進んでいるメンバー、そして同じ南米のブラジルから研修で来ていた数字にも強いメンバーがいました。まさに三井物産らしい、多様性に富む社員で構成されたチームだからこそ成し遂げられたことだと感じています。

入社直後からハードな業務を担いましたね。

はい。それでも、三井物産で初めての仕事がこの案件だったことは、商社らしい発想と仕事の型を覚えるためにとても良かったと思っています。
稟議というとどうしても、反対意見が出ないようにという“守り”の考え方に偏りがちですが、当時の上司は「それじゃあ面白くない。もっと自由な発想で、賛成を得るための方法を考えよう」という人で、この言葉を聞いて俄然、仕事が面白いと感じるようになったのを覚えています。
それと同時に、総合商社がどのようなプロセスを経て、何を重視して意思決定をしていくのかを知る貴重な機会にもなりました。おかげさまでこのときの稟議は通り、私がチームを外れた後も出資比率を増やして今は100%子会社になっています。

三井物産のアセットを最大限活用し、モビリティの未来をつくりたい

その後、Light Vehicleソリューション事業部に異動しましたが、どんな業務を担っていますか?

今いる部署は東南アジアへの投資を担うチームです。成長力が高く活気あふれる東南アジア地域に魅力を感じて、三井物産への入社当時から希望を出していました。
三井物産では、フィリピンやマレーシアなどで、乗用車にかかわる数多くのビジネスに出資をしています。長く続いている案件もあれば、最近投資したばかりのものもあり、規模も地域もさまざまです。こうした事業群のポートフォリオを俯瞰しながら、今後どのような方向に向かってこのポートフォリオを改善していくべきかについて、具体的な戦略を描いています。
ここでは前職の自動車メーカーが大切なパートナーとなっており、同社の関連会社にも出資させていただいています。念願かなってアジアの乗用車ビジネスを担当することになり、前職でお世話になった企業に再び関わりながらモビリティの未来を描けることを、とてもうれしく感じています。

現在の部署で密にやり取りをしているマニラ拠点のスタッフと(2024年撮影)
今の仕事ではどんな点に課題を感じていますか?

まずは出資先のビジネスを成長させることが重要ではありますが、それだけでは当社が手がける意味は半減します。ビジネス同士をつないで新しい価値を生み出すことに加え、より三井物産らしさを発揮して、当社だからサポートできること、当社だから牽引できるビジネスをもっと追求していかなければと思っています。
当社には多様な事業本部がそろっており、横の連携をつないでいくことでビジネスの可能性は無限に広がるはずです。中途採用の私は同期とのつながりのようなものがないので、社内の食事会に参加したり自分で企画したりするほか、本部横断のタスクフォースなどには積極的に手を挙げるなど、社内でのネットワークを広げる活動にも力を入れています。
今は労働組合の仕事も担っており、こうした活動を通して人脈を少しずつ広げられていると実感しています。
社内のネットワークは総合商社で働くうえでは大切な財産であり、東南アジアでのモビリティビジネスに生かしていきたいです。

外からジョインした者の目線を忘れず、意見を発信したい

荒井さんが他社でのキャリアを積んできたからこそ、三井物産で発揮できているバリューは何だと思いますか?

前職では製造工場はもちろん、オフィス内でも生産性を追求しており、高い品質を保ちながら効率化を図るメソッドが確立していました。会議や商談など限られた時間で求める成果を得るための事前準備や、忙しい経営層が一目で内容を理解して意思決定するための資料づくりといった「仕事の型」は三井物産当社でもとても重宝されましたし、そこに“三井物産流”をうまく融合させて生産性アップに貢献できたかなとは自負しています。
また、今は自動車を担当しているので前職と同じ業界を見ていることになりますが、メーカーにいるときには気が付かなかった視点を得ることができ、とても新鮮に感じています。同じように、商社側の目線だけでは気が付かないことも、きっとあるでしょう。
私は普段から、良い意味で三井物産に染まり切らないよう、外から来た者としての目線を忘れないように心がけています。当社はこうした視点からの意見を大切にし、耳を傾ける文化があるので、臆せずに発信し続けることも自分の役割だと考えています。

これまでのキャリア
今後、三井物産でどんなキャリアを描いていきたいと考えていますか?

今は自分がやりたいことというより、共感できるビジョンを描いて実現しようとする人を後押しすることに、よりやりがいを感じています。三井物産ではそういうタイプは珍しいとよくいわれますが、だからこそ価値も発揮できるかもしれないと思っています。
2023年7月に室長補佐となり、3~4人の部下を持つようになりました。管理職就任を打診された時は正直なことを言うと戸惑いました。当時は私自身がしっかりとしたビジョンを持っている人間ではないと感じていましたし、メンバーを引っ張っていけるか不安だったのです。
しかし、その後に実際に管理職の経験をしてみると、自分は人に教えたりサポートしたりするのが好きなのだと改めて実感できました。
私はビジョナリー型のリーダーではないと思っているので、会社がめざす方向性の中でいかにチームメンバーと楽しく仕事ができるかを考えることにパワーを使いたいなと思っています。かつて前職(大手自動車メーカー)の上司が「グループ員にはハッピーに仕事をしてほしい」と語った言葉にとても感銘を受けました。私も、同じ会社に入った仲間であるなら、皆に楽しく働いてほしいなと思っています。プレーヤー思考の方が多い三井物産の中で私は逆にプレーヤーじゃない思考を持っているので、不思議がられることもあります。でも今は多様性の時代。私のような人間がいるのも良いかなと思っています。
まだリーダーとしては新米で部下の人数も少ないですが、マニラの支店からも来ているフィリピン人のスタッフもおり、彼らが日本での生活や本店での仕事のスタイルに少しずつ慣れたり、スキルを発揮したりする様子を見られるのはとても達成感があります。
チームメンバーの成長を促し、夢の実現のために伴走することを通して、当社のビジネスやより良い社会に貢献していきたいです。

部下のやる気を引き出す名コーチの側面も

荒井さんの上長にあたる第二事業室長の龍瀬智哉さんと、同僚の後藤圭祐さんにも「荒井さんだからこそ生み出せたバリュー」について話を聞きました。

龍瀬さん:投資判断にいたるまでにはさまざまな分析が必要ですが、彼女はそのための“型”のようなものを身に付けているので、そのプロセスがとてもシンプルで早い。ゴールにたどり着くまでのストーリーを描き、必要なプロセスを管理し、人を巻き込みながら完遂していく能力の高さには目を見張ります。
しかも彼女は、そのスキルを出し惜しみすることなく後輩や部下に伝えられる。フレームを示すだけでなく、忍耐強く付き合って着実に成長させられるところも彼女の強みのひとつであり、リーダーとしても活躍してくれると期待しています。

後藤さん:私は1人ではまだビジネスでなかなか前に進めずもどかしさを感じることもありますが、荒井さんと一緒に仕事をしていると、常に進捗しているという感覚を持つことができます。
後輩の私に対して、良かったところ、そうでなかったところを常にフェアな姿勢でフィードバックしてくれ、今の私と目指すべき姿とのギャップを客観的に指摘してくれるところが、とてもありがたいと感じます。怒られたり注意されたりするよりもよほど危機感が生まれて、もっと成長したいと思えるのです。

第二事業室長 龍瀬智哉さん(写真右)と、同じチームの後藤圭祐さん(写真左)