会社の基盤を支える使命。「面白そう」を追うほどに専門性は大きく育つ。
会社の基盤を支える使命。
「面白そう」を追うほどに専門性は大きく育つ。
-
安田 真由子
Mayuko YASUDA
-
経理部決算統括室兼
サステナビリティ経営推進部データマネジメント室監査法人での4年間の勤務を経て、2023年に中途入社。連結決算および担当セグメントの稟議・会計相談対応をメイン業務として担いながら、社内会計制度の改訂などにも携わる。2025年よりサステナビリティ経営推進部を兼務。
大学在学中に会計士の資格を取得し、監査法人からキャリアをスタートした安田さん。「面白そう」「やってみたい」という好奇心を原動力に自分の専門性を磨いてきました。三井物産への転職を機に、会計の専門性に“総合力”という翼を得て、新しい挑戦へと導かれて います。数字の向こう側にある、経済、社会、そして人。好奇心に従い人生とキャリアを広げてきた軌道をお聞きしました。
Mayuko’s Story
Mayuko’s Story
知識と経験が、新しい私を見せてくれる。
会社の基盤を支える使命感をもって
まっすぐな心で進めるように。
プロフェッショナルの美学を、磨き続けていく。
はじまりは、
まっすぐな「知りたい!」から。
幼い頃は、なんでも質問する子どもでした。道端の看板にある漢字や英文を見ては「あれはなんと読むの?」と母を質問攻めにし、小学校の算数でも「この解き方、違うのではないか!?」と職員室まで突撃。突撃した結果、自分が間違っていたのですが(笑)、先生は私が理解できるまで丁寧に教えてくれました。「なぜ?」「どうして?」を放っておけない。そんな私に根気よく付き合ってくれた大人たちがいたから、今の自分があるのだと思います。
会計士を目指し始めたのは大学進学と同時です。何か強みを持ちたいと考えていた矢先、友人が「一緒に勉強しようよ」と誘ってくれたのがきっかけでした。会計士は、資格取得の過程でビジネスや会社のガバナンスに関する知識を体系的に学べます。私にとっては「会計監査人になりたい」というより、「どこの会社でも通用する汎用性のある知識を得たい」というのが勉強のモチベーションでした。
試験には3年生で合格し、新卒で就職した監査法人では4年目で主査を経験しました。専門性が身についたと思えたタイミングで、次のステージを見てみようと転職活動を開始。「一箇所で専門性を深掘りするより、事業会社で視野を広げた方が、より専門性が磨かれるのではないか」と考えたとき、幅広いセグメントを持ち、尚且つ異動しながら自分自身の幅まで広げられる三井物産は理想的な環境でした。
ビジネスの圧倒的な幅広さ。
専門性を鍛えるには、絶好のチャンスの場。
三井物産ではメインの業務として連結決算を担っています。グループ全体を俯瞰できるこの仕事は、好奇心旺盛な自分にとって願ってもないポジションでした。
着任してまず驚いたのは、取引の種類の膨大さです。「会計基準で想定されている取引形態が網羅されているのではないか?!」と思うほどで、たとえば「教科書にはあったけれど、実務で触れることは一生ないだろう」と思っていた会計基準に日常的に向き合いますし、それに関する実務マニュアルまで整備されている。あるいは他社であれば経理部が1年かけて検討するようなM&Aが、四半期の間に3件も4件も生じている。会計を生業にする人間にとって、こんなにも面白く、こんなにも経験を積める職場はないのではないかと入社早々に鳥肌が立ちました。
連結に加え、担当セグメントから回ってくる稟議案件へのアドバイスも行っています。会計基準に照らした減損リスク等の潜在的な財務インパクトなどを精査するのですが、実はこれも会計業務としては相当に応用レベルです。当社の社員は会計・税務基準に非常に詳しく、最初から自分で基準書を読み込み、将来性予測を作り込んだ状態で相談されます。それを受けての検証となると、もはや基準書にもない範囲、いわば「解釈の世界」に踏み込むことも多分にあります。私は自分で「専門性を身につけたから転職した」と考えておりましたし、確かに「できる」と自信のあった範囲で成果を出すことはできていましたが、その範囲の外側に、どれほど大きな世界があったことか、生きたビジネスに会計を活かすとなればどれほどの知識・思考・経験が求められるものか、と強く感じました。それに対し必死に学び、応じるうちに、「総合商社の“総合”は、個々人の総合力の結集だ」と実感するようになりました。
積み重ねた検証や助言が、実際の意思決定に役立つ形で反映された時は感謝されることもあります。また相手にとって耳の痛い指摘をしたとしても、自分が経理として正しく「ビジネスの経済性の門番」の務めを果たせた時には深い手応えがあります。会計の力を使い確かに役に立てている。その実感は私の誇りです。
別の物差しを手に入れたら、
世界は全く違って見えた。
世界の見え方が変わった、そんな感覚が訪れたのは、サステナビリティ経営推進部との兼務が始まった時でした。上司から「やってみない?」と声をかけられ、興味津々で「やります!」と返したことがきっかけです。
私が担っているのは、事業が気候変動に与える影響を評価するための基本データの集計です。取り組んでいくうちに、「会計上は優良案件でもサステナビリティ指標では評価が高くない」「経理部では深く検討しない規模の投資案件が、実は全社の温室効果ガス排出量削減に大きく貢献していた」など、事業のこれまで見えていなかった側面が次々と見えてきました。もちろん事業ポートフォリオの幅が広い三井物産だからこそ、補完しあってリスクヘッジできる面もありますし、そのバランスの取り方に感心することもあります。ただ、最終的には各事業が単体で、収益性と環境負荷軽減策を融合させないことには持続的な成長は見込めません。そのためのアプローチを知るたびに、「こんな手があったのか」「こんな視点があるのか」と学びが深まっていきます。
なんでも「面白そう」と思う性格を見抜かれているのか、新しいプロジェクトにも次々と声をかけていただきます。周囲から見れば“挑戦”なのかもしれませんが、私はあまり構えず、「やってみたい」が勝つタイプです。難しさも責任もありますが、その経験の一つひとつが自分をつくっていく。そう思うだけでワクワクしますし、大袈裟に言えば、それが人生の醍醐味だとも思っています。
幅広い視点を吸収し続け、
自分なりの価値を生んでゆく。
どんな仕事に向き合うときも、私には一つの美学があります。それは「子どもでもわかる構造にまで、一度必ず噛み砕いて理解する」こと。新しいビジネスの利益構造にせよ、制度導入の意義にせよ、複雑であればあるほど“画用紙一枚で説明できる形”に落とし込んでみる。曖昧な理解のまま走り出して、小さな後悔を重ねた経験があるからこそ、本質を曇りなく理解することを何より重視するようになったのです。もちろん三井物産のビジネスはそれほど簡単ではなく、説明しようにも言葉が複雑にならざるを得ないこともあります。それでも原点は、子どもの視点で「なぜ?」を手放さず、曖昧さを許さず、クリアになるまで解きほぐすこと。これはかつて子どもの私と周囲の大人たちが繰り返していた問答と同じです。今度は私が「気づく側」にも「教える側」にもなりながら、もちろん周りの方々にもたくさん教えてもらいながら、リスクを見抜く目を磨いていき「安田さんが引っ掛かるなら、おそらく何かあるのだろう」と思われるほどの存在を目指しています。
そして今、また新しくやってみたいことが増えています。一つ目は、長年の俯瞰的ポジションで身につけたマクロ視点を携えて、次はどこか一つの現場に深く入り込むことです。現場の話を聞き続けた結果、自分もその熱量の中に飛び込んでみたくなりました。ミクロとマクロ、両方の視点を融合させることで自分なりに価値を生んでみたいという好奇心に燃え、すでに上司にも次の異動先の相談をしています。二つめは、いつか「働く親」になることです。先輩たちのように、母親になってからも自分らしい働き方を見つけたい。それから、それから、それから……。やりたいことを話せば尽きません。ただ、一つだけ確かに言えることは「面白そう」と思える心こそが、新しい世界への鍵になるということです。面白そうと思うから、世界は面白く変わっていく。その自然体のままに挑み続ける姿勢だけは、これから先も変えずにいたいと思っています。