MITSUI & CO. RECRUIT三井物産 採用ポータルサイト

社員を知る

自由な発想で正解がない仕事に挑む

人事のプロとして
全社員のキャリア支援と組織を
強くする戦略を担う

星野 響子

Kyoko HOSHINO

米国三井物産株式会社ニューヨーク本店人事部

2020年入社、現在はCE(Corporate Excellence)業務に従事。
コアスキルは組織開発、人材開発など。公認心理師の資格も持つ。

三井物産では、大学や大学院で学んだ専門知識を活かし、それぞれの職場でその専門性を磨き上げているプロフェッショナルがいます。女性のキャリアについて研究し、入社前から人事の仕事を目指してきた星野響子さんに、自らのキャリアと人事の仕事に向き合う思いについて語ってもらいました。

人事のプロの必要性を認めてくれた

私は大学院で臨床心理学を専攻し、「不妊治療と女性のキャリア」をテーマに研究に取り組んでいました。当事者の方々にインタビューを重ねて強い課題意識を感じたことの一つに、多くの人が「かつての自分には知識が不足していた」と振り返っていたことでした。

今でこそ常識になりつつありますが、当時は女性が年齢を重ねるほどに妊娠しにくくなることはあまり知られておらず、妊娠しやすい時期にキャリアを優先してしまったという女性が多くいました。

思い描いたキャリアを築き、それぞれの職場でスキルを発揮していくには人生そのものが豊かである必要があるのに、情報や知識の有無で人生の選択肢が狭まってしまうのはとても残念なことです。多くの人が活躍できる社会を目指して文部科学省や厚生労働省でキャリア教育などに携わる道も考えましたが、最終的にはより柔軟な施策を実行できる民間企業で人事の仕事を目指そうと決めました。

2023年3月期決算から上場企業に人的資本の情報開示が義務付けられたことも追い風になり、人事領域に精通した人材の必要性も広く認識されるようになっています。しかし私が就職活動をしていた当時はそこまで意識は進んでおらず、企業の採用担当者に「人事の仕事をやりたい」と話すと、「はじめから人事?」と不思議がられるか、「スタートは営業でしょう」と困ったような反応が返ってくることがほとんどでした。

その中で唯一、三井物産の採用担当者は私の話に真摯に耳を傾けてくれました。必ず人事に配属する約束はできないとは言われましたが、人事戦略の重要性とプロフェッショナル人材の必要性を認めてくれたのです。

新入社員だからこそできることもある

入社後は希望通りに人事総務部に配属となり、当時のダイバーシティ経営推進室の一員になりました。学生にとっては人事というと採用担当しか見えないことも多いでしょうが、実はたくさんの仕事があります。

育児や介護と仕事の両立支援などの働きやすい環境づくり、教育研修による能力開発、やりがいと意欲を持って働いてもらうための評価のしくみを作るなど、さまざまな角度から社員の皆さんがより働きやすく、モチベーション高く組織や社会に価値を発揮してもらうためのサポートを、三井物産の人事総務部では行っています。

このうち、当時のダイバーシティ経営推進室の主なミッションは、女性社員と海外拠点の現地社員の活躍を加速させるための支援でした。まずは先輩社員と協力して現状把握と課題の分析をし、答申をまとめて経営会議に提出する作業に取り組みました。他社や海外の事例と比較して出遅れている点があれば、その理由を徹底的に分析し、対策を議論しました。

女性管理職比率を上げていくためには、単に女性を抜擢するだけの人事施策だけでは十分ではありません。程度の差はあっても多くの人の意識には性別役割意識が固定されているので、こうしたアンコンシャスバイアスを取り除いていくための啓発・研修にも力を入れました。社会人1年目だった当時の私にできることは限られていたかもしれませんが、その中でも自分にできることを考え、経験がないからこそ課題や疑問に感じた点を率直に発信することを大切にしていました。

人事施策に対する現場の関心が高まった

ダイバーシティ経営推進室で最も思い出深かった仕事の一つに「エンゲージメントサーベイ」があります。エンゲージメントとは従業員の会社に対する思い入れや貢献したいという気持ちのことで、エンゲージメントサーベイはそれを測定し、定点観測・分析することで組織開発につなげていくための調査です。

私が最初に担当した当時は結果を分析して公開するのがやっとで、それ以上は手が回っていませんでした。結果を公表しても、他の部門と比較して一喜一憂するだけの現場もあり、十分に活用できているとはいえません。せっかく調査するならそれを活用し、組織を強くするまでの具体的なプロセスを提示しなければならないという課題意識を室内で共有し、その方法について議論を重ねました。

最終的には、サーベイの結果に応じたワークショップをゼロから創り上げていくことになり、それを事業部などの現場に普及させていく取り組みを行いました。当時はエンゲージメントという概念自体の認知度が高くなかったので簡単な仕事ではありませんでしたが、根気強くアプローチしていくことで、現場の人たちの反応が少しずつ変わってきました。

次第にエンゲージメントサーベイの結果に関心を寄せてくる部署が増え、「ワークショップをやりたい」「この結果をどう解釈し、今後につなげていけばいいのかアドバイスをしてほしい」という要望が次々と寄せられるようになったのです。

この経験を通して、何をするにしても、それをより良い職場づくりにまで落とし込んでいくことの重要性と、正しく伝えていけば現場の人たちはわかってくれるということを認識しました。そして人事戦略は組織を強くする重要な経営戦略であることを改めて感じ、大きな達成感を得ました。

入社から3年後には研修担当チームに異動になり、主に女性と海外採用社員の中から次世代のリーダーを育成するための研修や、若手を対象にした海外派遣研修制度の実務を担うようになりました。

直近の担当研修は、Harvard Business Schoolと共同でプログラムを企画したもので、三井物産のリーダーとなる人材にとって必要な要素から逆算しながらコンテンツを考え、本店・海外地域本部、関係会社から選抜された約40名の社員に対して研修を提供しました。

キャリアもプライベートもあきらめたくない

2024年の秋からは、ニューヨークにある米国三井物産へ異動することになりました。実は3年前に結婚した夫がニュージャージー駐在となって以来、別居生活が続いていたことから、米国拠点への異動希望を出していたのです。

もともと米国三井物産の人事部門で日本人社員のポストはCHRO(最高人事責任者)と室長クラスだけで、ほとんどは現地スタッフだったため、私が異動できる余地はありませんでした。

でも、家族と一緒にいることも、三井物産でのキャリアも、どちらもあきらめたくない。若手を海外に研修派遣する制度が事業本部にはあるのに人事総務部では10年以上派遣されていなかったので、「トップバッターとして行かせてほしい」と訴え続け、希望をかなえてもらえたのです。この会社で働いていて本当によかったと思えました。

米国法人は本店に比べて規模が小さく、人事の仕事も本店ほど細分化されていません。ここなら採用や制度設計、人事評価や給与など、これまで経験していない領域にも広く関与できるのではと期待しています。人事のプロフェッショナルとして必要な経験を積むことができると期待しており、これからの研修が楽しみでなりません。

キャリア

2020年 大学院を修了し、三井物産入社。人事総務部タイバーシティ経営推進室に配属。
女性/海外採用社員の活躍推進、社内セミナー等の啓発活動の企画などを担う。
2022年 本店、国内支社、海外地域本部社員、一部関係会社約2万人を対象とした社員エンゲージメントサーベイおよびサーベイを用いた組織開発を担当。
2023年 人事総務部研修担当チームに異動。
主に女性・海外採用社員に関連する研修と若手の海外派遣プログラムを主に担当。
2024年10月 米国三井物産(株)に異動。人事部門で幅広い仕事を手がける。

人事の仕事に唯一の正解はない 

人事の仕事は、目標の実現に向けて自由な発想で施策を考えられる点が面白いところですが、そこには決まった正解がないという難しさもあります。すべての仕事に対して営業成績のような明確な数値目標があるわけではないし、たとえ達成しても、それだけで成功といえるわけではありません。

以前は振り返りをするたびに、あれでよかったのだろうか、自分のやった仕事に意味はあったのだろうかと悩んでいました。特に最初の3年くらいは、目の前の課題に向き合うことに必死で、全社的な経営課題を頭ではわかっていても実感として捉えることが難しいと感じていました。

入社5年目の今、ようやく自分の業務がどう経営課題につながっているかを理解できるようになった気がします。

自分がもしチームリーダーだったら、室長だったら、役員だったら、社長だったら、どう考えてどう意思決定するだろうか、と上の立場の目線を想像しながら毎日の業務に向き合っています。自分たちの仕事が成功したかどうかをその場で判断できなくても、真摯に考え抜いて結論を出し、胸を張って仕事ができたのなら、たとえ失敗に終わったとしても次につながる大切な経験なのだと思うようにしています。

入社3年目の研修で同期入社の社員たちと(2022年撮影)

同様に、自分がこの会社でどの程度成長できているかも、自分では評価できません。それでも、任せてもらえる仕事の量や範囲が少しずつ広がっていること、以前の自分ならとてもできなかった難しい仕事や新しい仕事を任されることがとてもうれしく、「仕事の報酬は仕事」というかつて先輩に言われた言葉を思い出し、本当にその通りだなと感じています。

人事総務部に限らず、コーポレート部門は直接会社に利益をもたらすわけではありませんが、企業の根幹を支える大切な仕事です。事業で直接社会課題を解決することはなくても、人を介してそれができる。組織のため、社会のために働く人たちが安心してキャリアを築き、人生を豊かにできるよう、支援を続けていきたいと思っています。

社員を知る